苫米地さんによる戦後レジームの闇を書いた本です。

以前に『明治維新という名の洗脳』のレビューを書きました。前の本は明治維新の闇がテーマになっていましたが、今回は戦後~高度経済成長期にかけてがテーマです。
明治維新の本もそうですが、苫米地さんが書いた歴史の本には一般的にはあまり知られていないことが書かれていると思います。
参考文献は一覧としてはありませんが、ところどころに他の本や資料の引用がされています。それらを元に苫米地さんが論理的に歴史の闇に迫っていく流れは、推理小説を読んでいるようでとてもスリリングです。
日本はアメリカの属国!?
日本がアメリカの属国だということはよく言われます。戦後占領されていた時期ならともかく、現在の日本は独立国です。属国というのは言い過ぎではないでしょうか。しかし、日本の国防において米軍が重要な存在であることは事実だと思います。
それ以外の分野でも、日本とアメリカは『年次改革要望書』をお互いに出し合っていますが、アメリカからの要望はいくつか実現しているのに対して、日本からの要望はほとんど実現していません。
また、元NSA、元CIA職員のエドワードスノーデン氏は『暴露:スノーデンが私に託したファイル』の中でアメリカの同盟国(Second Parties)はイギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの英語圏の4ヶ国、これにアメリカを加えたものを『ファイブ・アイズ』とよんでいました。では日本はというと、協力国(Third Parties)というグループに入れられていて、重要度としては同盟国よりも下です。

これらのことから、アメリカと日本が対等な関係だとは言いがたい。国同士の関係もそうですが、日本国内の問題についても、苫米地さんはアメリカの占領政策の影響だと言います。
GHQの内輪もめ
敗戦後、日本を占領統治していた連合国最高司令官総司令部(GHQ)ですが、内部には2つの派閥がありました。民政局(GS)コートニー・ホイットニー准将を中心とするリベラル派と参謀第二部(G2)チャールズ・A・ウィロビー少将が率いる反共派です。
財閥解体や労働組合の組織化や日本国憲法の草案を作ったGSのホイットニー准将に対して、キャノン機関を指揮し、諜報活動を通じて徹底的な反共活動を行ったのがG2のウィロビー少将です。
この2派が壮絶な派閥争いを繰り広げた結果、現在の日本があると苫米地さんは言います。具体的には検察と警察の対立構造、大きなこととしては護憲派と改憲派の対立などがあります。占領が終わって60年以上が経っても、日本人はGSとG2の代理戦争を続けさせられている・・・というわけです。
国連を脱退するべき!?
戦後の世界情勢を語るうえで、国際連合をはずすことはできません。日本はアメリカについで二番目に国連の予算を負担しています。
国連は第二次世界大戦の戦勝国が母体となっている機関です。日本語では戦時中の連合国と国際連合は別の用語ですが、英語表記はどちらもUnited Nationsのままです。そのため国連憲章第53条、第107条(第77条の一部)には敵国条項というものがあり、第二次世界大戦の枢軸国に対しては、国連安全保障理事会の許可が無くても攻撃することができるというものです。
日本ドイツイタリアはこの敵国条項の削除しようとして、国連総会で削除に向けて作業を開始することが賛成多数で決議されましたが、国連憲章の改定には常任理事国と国連加盟国の三分の二以上の批准が必要という高いハードルがあります。現在も削除することはできていません。
日本の安全保障を考えるうえで憲法9条の改正も重要ですが、国連憲章の敵国条項も大きな問題だというのです。
これに対する解決策として、苫米地さんは本書のなかで国連からの脱退を提案します。これだけ聞くと国際連盟を脱退した戦前の日本のようですが、そうではありません。
日本が敵国のままである理由の1つとして、日本人は大日本帝国から戦争に負けて日本国になったという認識ですが、英語ではJapan表記のままなので、他国からは大日本帝国のままと見られている問題があります。
そこで国連を脱退し、NIPPONもしくはNIHONという新しい国として改めて国連に加盟するという案です。
とんでもない案に聞こえますが、インドネシアのように一度脱退して再加盟した国は前例があるので夢物語ではないと言います。
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