7月20日に統合型リゾート(IR)法案、通称カジノ法案が参院内閣委員会で可決されました。
なぜ今の時期なのか?、ギャンブル依存の問題、地域への経済効果などさまざまな議論が展開されています。
そして苫米地さんが東京MXで7月23日放送のバラいろダンディで、カジノ法について解説していました。
バラいろダンディ 2018年7月23日より
苫米地さんと主張をまとめると、外資以外に経済効果はなく、一部の人以外には利益がないというものです。
放送でもカジノの仕組みの一部を解説していましたが、本書『『カジノは日本を救うのか?』』ではカジノの基礎知識から、日本にカジノを作る問題点、経済効果など一通りの話題をカバーしています。
カジノとは?
多くの人にとってカジノは馴染みがありません。日本国内にカジノがないからです。
海外のカジノにいったことがある人以外は、映画やゲームでのイメージが強いと思います。
カジノにはルーレット、ブラックジャック、バカラ、スロットマシンなど、ギャンブルをする場所です。
競馬、競輪、宝くじ、パチンコなど日本にもさまざまなギャンブルが存在しますが、それらとカジノとの最大の違いは誰が運営するかだと苫米地さんは言います。
日本はギャンブルは禁止されており、国や公共団体などにのみ許されているのが現状です。公営ギャンブルといいます。ただし三店方式をとっていて、建前上はギャンブルでないパチンコのようなグレーゾーンもあります。
カジノのように、民間企業が運営し(建前ではなく)ギャンブルができるというのは、日本には今まで存在しませんでした。
立地場所は完全に自由というわけではなく、カジノ特区という場所を認定して、その中でだけ営業するという形をとるようです。日本各地がこれに名乗りを上げており、現段階でもどこがカジノ特区になるかは不明です。
カジノ側は必ず勝つ
カジノに限りませんが、ギャンブルというのは必ず運営側が勝つようにできています。そうでないと運営を続けることができないからです。
アメリカの事例ですが、カジノが倒産の危機に陥った理由はすべてギャンブルとは関係のないものでした(参考:ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質)客が勝ちすぎてカジノが破産した例はないのです。
ただし短期的には客が儲かる可能性があります。客全体では損しても、個々の客が利益を出すからです。また、ブラックジャックは期待値が一時的に100を超えることもあります。これは本書のテーマから外れるので省略しますが、詳しく知りたい場合は以下の本が参考になります。
長期的に見ればカジノ側は必ず儲かり、客同士でお金を奪い合うのです。窓がない、ドリンクが格安or無料などお金を使いたくなるような仕掛けもカジノにはたくさんあります。
必ず儲かる・・・だからこそ各地でカジノ特区設立が叫ばれているわけです。
カジノのメリットとデメリット
カジノを作るメリットとしては経済効果が上げられます。というより、これ以外にメリットが無いと苫米地さんは言い切ります。
まず税金については、確実に取れるといえます。国や地方自治体が納付金と入場料を取れるからです。また新たな雇用が生まれるのも事実です。マカオでは政府の独占事業だったカジノを海外資本などの数社に解放した結果、失業率が低下したデータが示されます。
その他にもいろいろあると思いますが、少なくとも経済効果、具体的には税金と雇用という観点からすれば、メリットはありそうです。
しかし、苫米地さんは日本にカジノを作るべきでは無いと主張します。
倫理的な問題
カジノに賛成派の人でもカジノが悪いものだという認識はあります。なぜなら、ギャンブル依存症の問題や、マネーロンダリング、治安の悪化などは否定されていないからです。
また未成年への悪影響があるといいます。未成年が隠れてカジノに来る問題もありますが、ギャンブルによって金銭を得ることは子どもにどう説明するつもりなのか?という苫米地さんは問いかけます。
カジノで儲けることを認めることであり、それは働かずに(社会に付加価値を生み出さずに)報酬を得ることを認めることです。
これは資本主義の完全否定ということになります。
(中略)
カジノについて、子どもたちにはどう説明するつもりなのでしょうか。
カジノを推進するということは、子どもたちにもカジノとは何かを教える必要が出てくるはずです。「よくないものをなぜあえて解禁したのか」と聞かれたら、答えようがありません。解禁する以上、「カジノはいいものだ」と教えるしかないのです。 846
大人はOKで子どもはNGという論理も無理があります。ギャンブル依存や労働の対価以外で金儲けをするのは、大人に対する悪影響だからです。
大人には大人の世界があると教えるのも一つの方法ですが、子どもに胸を張って説明できないような政策は行うべきではない・・・という苫米地さんの主張は大変説得力があります。
経済効果への疑問
もう一つは経済効果への疑問です。
マカオのカジノではジャンケットという有力客の仲介業者がいて、彼らのマネーロンダリングによって利益を得ている側面があるようです。マネーロンダリングを完全に排除できるかが疑問ですが、マネーロンダリングができないカジノに海外の富裕層がわざわざ来るのか?ということ。
また、日本にはカジノを運営するノウハウがないので、外資の力を頼らずにはいきません。そうなると海外の富裕層からの利益を海外に流すことになります。国を挙げてカジノを推進する意味はどこにあるのでしょうか?
カジノは日本を救うのか?
本書を読む限り、カジノ解禁するデメリット<メリットとは思えません。経済効果を考慮しても、デメリットが大きく、そもそも経済効果も怪しいのですから。
とはいえカジノ法案は成立しました。私はあなたにできることは、今後のカジノの行方を観察すること、具体的には苫米地さんがバラダンで言っていたようにカジノ法に賛同している人たちがどのように利権を得るのかに注目しましょう。
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