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苫米地英人の認知科学入門『認知科学への招待』

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認知科学への招待

苫米地英人による、認知科学の入門書です。

タイトルからして苫米地英人の本には珍しい印象を受けました。大学の授業で使う教科書のような感じです。

認知科学とは?から始まり、苫米地さん本人の認知科学との出会いと関わり、認知科学の理論を取り上げて、最後は認知科学における苫米地さんの理論の解説、参考文献の提示と内容は盛りだくさんです。

『専門的なところまでは踏み込まない範囲で、もう一歩だけ学問的な話にしてあります 65』と苫米地さん本人が言っているようにそこそこ専門的なので、大変読み応えがあります。

認知科学とは?

苫米地英人の専門分野

苫米地さんは脳科学者と紹介されることが多いですが、本人は『認知科学(計算言語学・認知心理学・機能脳科学・離散数理科学・分析哲学)』と言っています。

言語学、心理学から数理学、哲学まで幅広い分野にまたがっています。特徴としては既存の学問に認知科学の要素を足したことです。例えば以下です。

計算言語学 = 認知科学 + 言語学

認知心理学 = 認知科学 + 心理学

機能脳科学は認知科学と脳科学を足したもの。苫米地さんは脳科学者といっても、認知科学の要素が加わった脳科学者というわけです。日本では苫米地さん以外に機能脳科学者を名乗っている人は聞いたことがありません。

構造主義(行動主義、実験主義)から発展した認知科学

認知科学とは?を考えるにあたって、その前に主流だった概念を知ることがその助けになります。

これは一見遠回りに見えますが、理にかなっています。明治時代を語るには江戸時代のことは知っている必要がありますし、哲学を理解するには、いきなり近代哲学から入るよりもソクラテスの時代から学ぶほうが簡単です。

認知科学以前に主流だったのは構造主義でした。構造主義は物事の構造…全体像を明らかにしようというものですが、苫米地さんは広義の意味での構造主義、つまり行動主義や実験主義の意味で使っています。

例えば心理学では行動主義心理学です。これは心を直接観察することができないので、行動を観察することで心を間接的に研究します。

パブロフの犬は聞いたことがありますか?これは犬の行動を実験を通じて研究しました。

こうして行動を観察して、統計データを収集しても”心”がどうなっているのかはわかりません。傾向やパターンを知るのがやっとです。そこで出てきたのが認知科学の要素を取り入れた認知心理学です。

認知科学とは?

苫米地英人は認知科学を以下のように説明します。

認知科学は、刺激による反応ばかりを見るのではなく、心とは脳の「機能」に着目しました。「機能」というのは「ファンクション(Function)」の訳です。「機能主義」などど呼ばれますが、これは「ファンクショナリズム(Functionalism)」の訳で、認知科学者というのは、この「ファンクショナリズム」を信じている科学者のことをいうわけです。101

ファンクショナリズム(機能主義)には、日本語の機能を重視するという考え方もありますが、その他に関数で表現できるという意味もあります。

関数は数学ではxやyなど、EXCELのsum関数など。様々な場所で使われています。心を関数で記述できると考えるのが認知心理学です。

 

関数はあるものを入れると、別のものが出てきます。行動主義心理学と認知心理学と違いを自動販売機に例えてみます。

お金を入れ、ボタンを押すとお茶やジュースが出てきます。入れるお金や出てくるジュースについて研究するのが行動主義心理学です。ひたすらお金を入れて、出てきたジュースとの関連性をさぐります。

これに対して、自販機の機能そのものを研究するのが認知心理学です。xを自販機として、100円を入れると〇〇が出てくる…という感じでしょうか。

認知科学と人工知能

認知科学と深い関係があるのが人工知能です。苫米地さんも人工知能に興味があって、人工知能では有名なロジャー・シャンクの本に感銘を受け、当時シャンクのいたイェール大学に留学したといいます。

人間の脳をコンピューターで再現しようとするのが、人工知能です。コンピューターは元を正せば0と1で判断しています。これに対して人間の思考はかなり柔軟で、状況に応じて複雑な判断をしています。

例えば、あなたがレストランへ行ってその店のシステムを無意識に判断しています。店員を呼ぶのにベルを押すのか声を出して呼ぶのか、どのメニューを選ぶのか、レジで会計するのか食券制なのか…といったぐあいです。

これをコンピューターに学習させようとして、ロジャー・シャンクが提唱したのがスクリプト理論です。

これは特に、人間が行う手続きを認識するための方法論として提唱されました。「スクリプト」というのは「台本」という意味で、ある一連の行動がシナリオに基づいて一かたまりとして関連付けられたものを言います。 340

レストランでの人間の行動を台本のように記述する方法です。本書ではいくつかの理論について苫米地さんが解説しています。

苫米地英人の「超情報場仮説」

ロジャー・シャンクやマービン・ミンスキー、ノーム・チョムスキーなどの学者の説を解説した最後に、苫米地さん独自の学説『超情報場仮説』が登場します。

私の考えは、他の私の著書で触れている「超情報場」という考え方です。

ごく簡単に言いますと、この世は初めから抽象度の階段がある世界であって、その世界を普通に移動していれば、勝手に抽象度は上がってしまうといういうことです。

例えば、物理空間(3次元空間)には誰かが何かをしなくても、最初から「高さ」というものがありますよね。

(中略)

私の仮説は、「この世は3次元空間ではないではないか」というものです。3次元空間よりも高い次元の空間ではないかということです。1215~1245

苫米地さんが提唱しているメソッドは大きく分けて2つあります。

  1. エフィカシーを上げる
  2. 抽象度を上げる

エフィカシーを上げるは、コーチングの考え方です。ポジティブ心理学や教育心理学の研究がベースになっています。

対して抽象度を上げるというのも苫米地さんの本で繰り返し出てきますが、これは認知科学がベースで、苫米地さん独自の仮説だというのが本書でわかります。

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