スコトーマとは?外すには?
スコトーマとは盲点のこと。つまり自分では気づかない部分やまだ気づいてない部分を指します。
コーチングではゴールを達成する手段を考える必要はないと苫米地さんは言います。ゴールの達成が困難であるほど、そのための具体的な手段を見つけるのは難しいですが、コーチングを受けるとこのスコトーマが外れ、周りにあるゴールを達成するための手段が見つかるというのです。
このスコトーマですが、苫米地さんをはじめ多くの人が外す方法を唱えています。抽象度を上げる、物理的に高いところに登る、知識を増やす…など。
スコトーマを外す方法論が確立されているというよりは、経験に基づく方法が提示されているというのが私の印象です。
『決定力! 正解を導く4つのプロセス』とは?
本書は意思決定をどのように行うべきかがテーマです。
意思決定と聞くと、大げさに聞こえるかもしれません。しかし、本書で出てくる例は身近なものが多いです。
人間関係を改善するには?恋人と別れるべきか?自分が大事にしていることに時間をかけるにはどうすればいいか?…といったもの。
中には優秀な人材を雇うには?のように経営者が考えるものなんかが含まれます。
そして意思決定を行う上で陥りやすい罠として、以下が挙げられています。
1、視野の狭窄
2、確証バイアス
3、一時的な感情
4、自信過剰
視野の狭窄はそのまんまですが、他の3つもスコトーマ(盲点)の具体的な理由と言えます。そしてこれらに対処する方法が書かれているのが本書です。
また、本書は巻末に参考文献一覧が載っており、心理学や経済学の研究に基づいて書かれています。これは重要なことだと私は考えています。参考文献を読者が検証することが可能だからです。
苫米地さんの本にも参考文献が載っているものもありますが、コーチングに関する本には載っていないことが多いです。それに比べると、本書は検証することが可能である=より科学的であると判断したので、レビューをすることにしました。
視野の狭窄
スティーブ・コールは、テクノロジーを使って子どもの健康増進に取り組む非営利組織「ホープラボ」の研究開発担当副社長だ。彼はこう話す。「人生で”こっちとあっちのどちらをするべきか?”と悩んだら、必ず”こっちもあっちも両方する方法ははにか?”と考えるといいでしょう。両方ともできるケースがびっくりするほど多いはずです」 19
何かを決めるとき、私たちは片方の選択肢しか選べないと思いがちです。
そして一度そう思い込むと、両方の選択肢を選ぶ方法や、別の選択肢は頭の中から消えてしまいます。
2つのうちどちらかというのは、単純で分かりやすいというメリットもあります。
しかし、現実世界は単純ではありません。両方選ぶ方法が存在したり、思ってもみない別の選択肢が現れることもあります。
確証バイアス
私たちは生活の中で、ある状況について信念を抱いたあと、その信念を裏付ける情報を探すという習慣がある。この「確証バイアス」と呼ばれる厄介な習慣こそ、意思決定の第二の罠だ。
確証バイアスについての研究は数多く行われている。たとえば、喫煙の有害性に関する医学研究があまり進んでいなかった一九六〇年代、スモーカーたちは「喫煙は肺がんを引き起こす」という見出しの記事よりも、「喫煙は肺がんを引き起こさない」という見出しの記事に注目することが多かった 21-22
確証バイアスとは、自分に都合の良い情報や知識ばかりを集めることです。
人間の脳は自分にとって重要な情報を察知するようにできています(苫米地さんはRASと読んでいます)問題はどの情報が重要かは人によって違うこと。
遠い国の紛争のニュースよりも、職場の人間関係のほうが気になるものです。赤の他人の近況より、家族や友人など親しい人の近況のほうが重要でしょう。
自分にとって重要な情報=自分にとって都合のよい情報…ばかり集めていて、自分に都合の悪い情報を無視していれば、間違った結論が出るのは当たり前です。
一時的な感情
難しい決断に直面すると、感情が揺さぶられる。思考が堂々めぐりする。状況について悩む。毎日のように心変わりする。私たちの意思決定をスプレッドシートで表現したとすれば、数値は決して変わらない。新しい情報は加わっていないからだ。ところが、私たちの頭の中はそうはなっていない。ああでもないこうでもないと悩んだ挙げ句、目の前が見えなくなっている。こういうとき、いちばん必要なのは大局的な視点だ。 27
あなたも私も人間である以上、感情があります。
何かの決断をするにあたって、この感情の影響を無視することはできません。
頭の中で考えがぐるぐる回るというのは、あなたも経験があると思います。
新しい情報がない以上、考えるのをやめるのが合理的なことはわかっていても、考えるのを辞めれない、気がついたら考えていた等々。
感情が無意識に出てくる以上、一時的な感情から逃れることはできません。
自信過剰
私たちは自分の予測を過信している。未来について予想するとき、私たちは手元にある情報にスポットライトを当て、その情報から結論を導き出す。一九九二年に、こんな旅行代理店の社長がいたらどうだろう。「私の旅行代理店はフェニックス地域の市場リーダーだ。そして、お客様と最高の関係を築いている。より、先手を打って、支店を増やしておこう」
いちばんの問題は、私たちが自分の無知に無知だということだ。「なんてこった、インターネットだって?この旅行代理店はおしまいだ」 30
人は自分でした予測について、自信を持つことが多いです。
しかし、現実の世界は不確実な出来事だらけで、私たちの予想していなかったことが起こります。
スマートフォンやインターネット、AIが現在のように使われていることを今から30年前に予想することができたでしょうか?技術革新や新しいビジネスが偶然の発見から生まれることが多いのも理由の一つです。
私たち一般人に予測は難しいですが、専門家でも例外ではありません。
本書でも声優という職業を否定するワーナーブラザーズの設立者や、ビートルズとの契約を見送った凄腕スカウトマンの話が出てきます。
その道の専門家でも未来を正確に予想するのは難しいのです。
意思決定を上達するWRARプロセス
意思決定をうまく行うために、本書ではWRAPというシステムが提唱されています。
これがスコトーマを外すのに非常に役に立ちます。
具体的な方法論は本書を読んでもらうとして、WRAPは以下の要素からなります。
W=Widen Your Options(あなたの選択肢を広げる)
選択肢を増やす、もしくは今ある選択肢を検討する必要があります。
自分と同じ問題を解決した人を探すという、いわゆる”巨人の肩の上に立つ”というのも一つの方法です。
R=Reality-Test Your Assumptions (仮設の現実性を確かめる)
仮設というのは、検証してみる必要があります。そのために本書ではウーチング(小さな実験を行って仮設を検証する方法)が出てきます。
他にはあえて反対意見を出したり、わざと失敗してみる(ただし許容できる範囲で)ことなどがあげられます。
A=Attain Distance Deciding(決断の前に距離を置く)
人間が感情を持っている以上、感情からは逃れられません。そこである程度時間を置くことで、冷静になることです。
これだけでは不十分で、時間を稼いでいる間に、優先順位を決める、友達が自分と同じ立場だとしたらなんとアドバイスするか考えるなどの方法があります。
P=Prepare To Be Wrong(誤りに備える)
未来が不確実なのは当然なので、それを考慮して決断する必要があります。
事前に失敗を織り込んだ計画を立てることや、問題が起きたときの対処法をあらかじめ考えておくなどです。
まとめ
本書ではスコトーマという用語は使っていません。
しかし、エピソードをいくつか読めば、苫米地さんが言っているスコトーマと本書で意思決定に影響を及ぼすものが同じであると理解できると思います。
これは本書の対処法が、スコトーマを外すのに役に立つことを意味します。さらに本書は最新の研究と科学の方法論に基づいており、参考文献や著者オススメの本なども記載されていて大変オススメです。
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