戦争論といえばプロイセン(旧ドイツ)の軍人クラウゼビッツのものが元祖です。他には小林よりのり氏も戦争論という漫画を書いています。
苫米地さんによる”戦争論”は類書とどう違うのでしょうか?結論からいうと、歴史の常識からすると意外なことが書かれていました。
苫米地さんはいくつかの戦争に関する本を出しています。以下の本は本書の明治維新版という感じでしょうか。
コアとなる部分は被っていますが、現在の日本の状勢など、本書にしかない内容もあります。

富国強兵の本当の意味とは?
まずは日本国内の問題からです。
苫米地さんは現在の日本について『戦前の神国日本と比べればはるかにソフトな国家統治になっているものの、日本の体質は明治維新以来まったく変わっていません』と言います。
明治時代の日本のスローガンとしては”富国強兵”というものがあります。文字通りにとらえれば国を豊かにして、兵隊を強くするということでしょうか。しかし、富国強兵には別の意味も込められていると言います。富国で言っている国というのは、国民全体ではなくて、特権階級・・・具体的には貴族、政治家、官僚、軍の上層部、国策会社の経営者を指します。大多数の国民は戦争中物資が困窮して貧しかったのに対して、戦艦大和も”大和ホテル”と揶揄されたように、上層部は贅沢ができたのは事実ではないでしょうか。
富国を現代風にしたのが”トリクルダウン理論”でしょうか。
強兵についても、兵隊を強くしてどうするのかといったら、植民地を作って、そこから搾取するためという側面もあります。
なぜアメリカに戦争を仕掛けたのか?
太平洋戦争で日本はアメリカに戦争を仕掛けたわけですが、これはなぜでしょうか?一般的には、石油の禁輸だと言われています。ABCD包囲網やハルノートもありますし、対米戦の見通しを近衛首相から聞かれた山本五十六連合艦隊司令長官は、『それは是非やれと言われれば初め半年や1年の間は随分暴れてご覧に入れる。然しながら、2年3年となれば全く確信は持てぬ』と言ったそうです。軍艦を動かすために必要な重油が尽きてしまうと。
資源の無い日本が追い詰められてヤケを起こしてしまった・・・これに対して、苫米地さんは疑問を呈します。まず、アメリカは対日全面禁輸が行われてからも、ドイツの企業を通じてアメリカ産の石油が日本に届いていたこと。
次に船を無駄に使っていることです。戦時中、石油や資源は徴用された民間商船が行っていました。一応武装していたものの、民間船であるため米潜水艦にことごとく撃沈されていました。死者は推定で約六万人と言われています。
問題はこの船を動かすにも重油がいるということです。人命や船そのものは言うまでもありませんが、貴重な石油を浪費していたのです。これがアメリカからの石油供給を絶たれた国のやることでしょうか。
ヤケになってやっていたとか、集団思考によるものだとか言われますが、いまいちピンときません。
苫米地さんは日本がアメリカに戦争を仕掛けた裏には国際金融資本家がいたと言います。
巨大な陰謀の一部にされた大日本帝国
大きな戦争に大銀行家が乗じて、その国の利権・・・これは中央銀行などの大きいものを牛耳ったり、単純に金を貸し付けるなどして大儲けする流れがあると苫米地さんは言います。本書で具体的に書かれているのは、イギリス革命、フランス革命、アメリカ独立戦争、明治維新、第一次世界大戦などです。
この流れは第二次世界大戦も例外ではなく、日本は大銀行家の手のひらの上で転がされていたというのです。その証拠にアメリカのFRB(米中央銀行)は連合国とナチスの両方に資金を供給し、その資金は日本にも流れていました。『孫子』にもあるように、敵の補給を立つというのは戦術の基本です。ナチスドイツや大日本帝国を倒したいのなら、実際の戦闘よりも資源や資金を立つことは有効だと言えます。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか?『明治維新という名の洗脳』でも明治維新で似たようなことがありましたが、連合国も一枚岩ではない・・・正確に言うならば政府、国民と大銀行家は別の論理で動いているということだと思います。
私たちはどうすれば良いのか?
戦争の裏に大銀行家の思惑があるというのが、本書の重要な部分だと思います。これは本当でしょうか?苫米地さんの言うことは説得力がありますが、状況証拠しかないのも事実です。判断を保留して、これが真実だと仮定します。その場合、私たちはどう対処すれば良いのでしょうか?
戦争の本質は”金”でしかないのなら、国民一人一人がそれを否定するしかないと苫米地さんは言います。少なくとも日本は民主主義国家なのだから、国民の大多数が拒否をできれば戦争に関わる確率は減ります。
本書の中に出てきますが、(大銀行家の影響を受けた)政府やマスコミがありとあらゆる宣伝文句を使って戦争を扇動します。それに対し「金目当てなんだろう」とハッキリ拒否しろと言います。企業の営業やマーケティングに対して否定するのと同じ理屈で、政府やマスコミの扇動も否定するのです。
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