苫米地英人が語る武術!?
幅広い分野の本を出版している苫米地さん。
今回は武術に関する内容です。以前にレビューした『自分のリミッターをはずす! ~完全版 変性意識入門』の続編になります。

『自分のリミッターをはずす! ~完全版 変性意識入門』では変性意識について学ぶためのツールとして、催眠術、気功、古武術が登場しました。本書ではこの古武術…中でも空手でまるまる一冊使っています。
山城師範と菊野選手の協力のもと、本書は完成しました。彼ら二人がいなければ、たぶん、この本は形になっていないでしょう。なぜなら、いくら私の実家が武家であっても武術について私自身が語ることはあまりできないためです。 189
本書はかなり変則的な形式になっていて、以下の4人が登場します。
・苫米地さん
・インタビューの聞き手…『苫米地博士の「知の教室」: 本当の知性とは難しいことをわかりやすく説明することです!』のライターの方。元格闘技雑誌の記者。
・菊野克樹氏…プロの格闘家で、元UFC(アメリカの総合格闘技の団体)選手。後述の山城氏の弟子。
・山城美智氏…沖縄拳法空手道沖拳会六代目師範、他流派や菊野氏などの他競技の選手にも指導しているそうです。
苫米地さんの文章、菊野氏へのインタビュー、菊野氏と苫米地さんの対談、山城氏へのインタビュー、山城氏と苫米地さんの対談の順に進んでいきます。
空手には剛柔流や松濤館流等の伝統派、極真会館や新極真会等のフルコンタクト空手など様々な流派や団体があります。
山城氏は沖縄拳法空手という空手流派を指導しており、そこで使われている技術が話の中心です。

表紙にデカデカと苫米地さんの名前は乗っていますが、菊野氏と山城氏が本書の重要な部分になっているのはわかると思います(一応、苫米地さん自身も極真空手を習っていたそうです。)
沖縄空手の技を総合格闘技で使う!?
私が本書を読もうと思ったのは、苫米地さんがいつも言っている潜在意識の話を知るためもありますが、武術の達人と呼ばれている人の技が実際に使えるのかに関心があったからです。
『達人は保護されているッッッ』
という漫画グラップラー刃牙の有名な言葉がありますが、2006年に探偵ファイルというサイトの企画で、大東流合気柔術の達人と言われていた柳龍拳氏が総合格闘家の岩倉豪氏と公開試合をしました。動画も残っています。
柳龍拳氏が一方的にやられる結果でした。ずいぶん昔のことですが、リアルタイムでこの試合を見ていた私は大変衝撃を受けたのを覚えています。
それ以来、達人の技は実際に使えるのか?というのが個人的な疑問としてあったのっです。
また空手の型について実践でどのように使うのか?という疑問もありました。
打太刀と受太刀の二人で行う剣術の型などと違って、空手の型というのは基本的に一人で行います。
型をどのように使うのか?というのは文章として残っておらず、師匠から弟子へ口伝によって継承されるのが普通です。
沖縄の人が本土の人間には本当の型の解釈を教えていないと主張している本もあります。
この主張が正しいのかは不明ですが、型の解釈が人によって意見が分かれるのは間違いありません。
菊野 山城先生が教える型は、先人からずっと伝えられてきているものなので、型の動きの意味も全部教えてくれるんです。
ーーそれが理にかなっているんですか?
菊野 かなってます。型には全部意味があって、それを山城先生はすべて解説してくれてますね。例えば、沖縄拳法空手で正拳を突く時には通常、引き手を腰の位置に取ります。(写真下)。こうすると手と背中がつながるので重さが伝えられるんですね。
ーー手と背中がつながる?
菊野 型の筋肉を使うのではなくて、手と肩甲骨が連動するように使うんです。
ーーつまり。それがさっきおっしゃってた「手先だけを動かすと身体が前に引っ張られて自分の体重をそのままドーンとぶつけられる」ってことになるんですね。
菊野 そうです。
ーーしかも、そういった原理がすでに型の中に入っているんですね。
菊野 だから、納得できるんですよ。そのやり方で実際に威力もあるんで。34-35
菊野氏や山城氏の解説は大変わかりやすく、理にかなっています。
また、UFCなど総合格闘技の舞台で山城氏に指導された技を使っているというので説得力があります。
なぜ武術なのか?
本書では武術を中心に書かれていますが、武術はあくまでもツールであり、武術で強くなるのが苫米地さんが提唱している目的ではありません。
自分で自分の身体を自由にできないということは、それを理解した瞬間に、自由に身体があつかれるようになる、ということでもあるのです。
つまり、私たちはあまりにも無意識に反応したり、行動したり、判断したりしていた、と気づくことがまずは重要なのです。
無意識とは意識していない感覚のことですから、意識した瞬間にそれはもう無意識ではなくなります。
意識に上げてしまえば、コントロール可能になりますから、変えていくことができるのです。
(中略)
では、人間の無意識が理解できたら、具体的にどんなことができるのでしょうか?
とても簡単な例を挙げれば、プレゼンテーションなんかがそうです。人の注目を集める方法は武術でいえば、誘いの技術なんかが使えるでしょう。
(中略)
とはいえ、いま言ったプレゼンテーションの例はあまりにも下世話で、私が本当に武術の技を応用してほしいのは、自分自身の変革です。 48-49
武術を学ぶことによって、無意識をコントロールできるようになる=自分自身をコントロールできるようになるということ。
自分自身というのは、自分の心と身体です。この2つをコントロールするツールとして武術が優れているわけです。
本書の内容を実践する具体的な方法が書かれている
本書を読むと、古流武術が潜在意識にどのように関わってくるかよくわかります。
空手や合気道などの武道をやられている人や、空手を総合格闘技などの競技に活用することを考えている人には大変有用な本です。
菊野氏と山城氏の話がメインなので、苫米地さんに良いイメージがなくても問題ないと思います。
あなたが武道の経験がない場合、実際にはじめてみるのもいいですが、本書には空手(首里手、泊手)の基本的な形である”ナイハンチ”の立ち方のワークが乗っています。
両足を開いた状態から、横一直線に移動するというものです。私も実際にやってみましたが、なかなか難しいです。
しかし、これを実践することによって普段無意識に使っていた自分の体を意識的に使うことになり、潜在意識をコントロールにつながるそうです。
武道は知識よりも実践することが大事ですが、本書では簡単に試すことができるので大変オススメです。
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