オウム真理教の信者を脱洗脳する際に、手塚治虫のブッダを読んで仏教を学んだという苫米地さんですが、現在では天台宗の僧侶の資格をもっており、仏教に詳しいです。本サイトでも苫米地さんが空海の思想について解説した本『空海はすごい』のレビューは人気です。

仏教の専門家である苫米地さんと本書で対談しているのは”ヨーガの王者”成瀬雅春氏です。
本書の構成としては、苫米地さんと成瀬氏の対談→成瀬氏への単独インタビューという流れが2回続きます。成瀬氏のインタビューには瞑想法とクンダリーニヨガの解説とワークが含まれます。インタビューと対談にはお二人とは別に本書の編集者の方も参加しています。
成瀬雅春氏とは
成瀬雅春氏は2001年に全インド密教協会からヨーギーラージ(ヨーガ行者の王者)の称号を授与された世界的に有名なヨーガ指導者です。
自身の成瀬ヨーガグループを主催されていますが、日本で成瀬氏が有名になったのは、1983年に雑誌サンデー毎日に成瀬氏が空中浮揚した写真が掲載されたことです。
Googleで「成瀬雅春 空中浮揚」と検索すると当時の写真を見ることができます。これは本物なのでしょうか?正直信じがたいですし、本当に空中浮揚しているのであれば、YouTubeに動画で上げていただかないと検証のしようがありません。
ちなみに成瀬氏ではないですが、ディスカバリーチャンネルでアメリカ人のマジシャンがネパールで空中浮揚をする僧侶に取材するドキュメンタリーを発見しました。英語ですが、40分あたりから再生すると僧侶が空中浮揚している様子を見ることができます。
空中浮揚が本当にできるかはともかく、成瀬氏の空中浮揚は当時としてはインパクトがあり、オウム真理教の麻原彰晃にも影響を与えました。
“ヨーガの王者”成瀬雅春VS仏教原理主義者苫米地英人
●瞑想ブームの問題点
ーーさきほど苫米地先生がおっしゃっていた「煩悩肯定がいまの日本では強すぎる」の部分って成瀬先生も同じですか?
成瀬 そいういう可能性もあるかもしれないね。でも、僕はもともと全部を愉しくしてしまうから、よくわからない(苦笑)
苫米地 成瀬先生はそれでいいんです。逆にわかるほうがマズいでしょ(笑)。
(中略)
ーーマインドフルネスはダメなんですか?
苫米地 全部ダメでしょ。なぜかっていうと…。
成瀬 ちょっと待って苫米地さん、僕ね、実は『マインドフルネス瞑想』って本を一昨年出しているんだけど(苦笑)
苫米地 えーっ、先生、本当ですか!?
成瀬 ホント、ホント、(苦笑)。監修者として最初の見開きページに原稿を書いているいたんですよ、僕がいつも思っていることを編集者も「そうですよね、やっぱりそうですよってね」言ったんで、「問題ないな」と思っていたんですけどね。ダメだったかな。
苫米地 いえ、先生はそのままでいいです(苦笑)。マインドフルネス瞑想というタイトルの本に、成瀬先生の原稿が載るほうが、逆に本当のヨーガとは何かがわかっていいかもしれないぐらいです(笑)
成瀬 ヨーガがブームになる場合、正しく理解されないことも多いですけど、僕としてはどんな形であろうと、興味を持ってくれるのはいいことだと思ってますね。 19-21
仏教に対する圧倒的な知識と経験に加えて、得意のディベートを使い、最近のマインドフルネスブームに警鐘を鳴らす苫米地さん。本書では仏教原理主義者を立場をとっているようです。
対して成瀬氏はリラックスしているというか、ゆるいスタンツでありながら苫米地さんに対して妥協はしない、イメージ通りのヨーガの達人という印象を受けました。
苫米地さんはエラそうだという批判を受けることがあります。実際に対談でも強気に自分の主張を展開することが多いでしょう。
しかし今回は苫米地さんのペースが乱れている一面を見ることができます。苫米地さん自身の天台宗の師匠である荒了寛氏に対しては控えめな印象でしたが、成瀬氏に対してもリスペクトしているように思えます。
●本物のヨーガとは?
ーーでは、本物のヨーガというか、まともなヨーガってなんですか?
成瀬 う~ん、本物? まとも?
ーーいや、すいません!そう言ってしまうと、さっきの「正しさ」とは何か、みたいな話になってしまいますから、ちょっと聞く角度を変えます。マインドフルネスは別としても、そもそも多くの人にとってヨーガって、ダイエットや健康法だと思うんですね。
苫米地 だってカリフォルニアでやっているハタ・ヨーガ(さまざまなポーズを取るヨーガの基礎)はみんなダイエット・ヨーガだからね(笑)。
成瀬 肉体的な効果で考えれば、ハタ・ヨーガは健康法としてもものすごく効果的ですよ。
苫米地 でも、ハタ・ヨーガだって解脱のためにあるわけじゃないですか。いろんなポーズにしても、あれはダイエットや健康のためにあるんじゃなくて、長時間の瞑想ができる身体を作るためにあるわけですよね。
成瀬 1時間、2時間の瞑想中に腰が痛くなったり、肩が痛くなったりすると瞑想がうまくいかなくなってしまうので、そういうのを事前に解消しておくためいに、身体をひねったり、逆立ちとかして、体調を整えておくんです。
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噛み合っているのか噛み合っていないのか、何とも言えない苫米地さんと成瀬氏の対談ですが、結果としてはヨーガや瞑想の知識を得るには最適だと思います。
例えばヨーガと瞑想の関係についてです。目的は瞑想をすることで、長時間の瞑想に耐える身体を作るための技術がヨーガというのが二人の見解です。
インタビュアーの方が言っているように、現代の日本でヨーガをやっている人の大半は健康目的だと思います。しかし、本来の意味を理解することで、ヨーガに対する姿勢も違ってくるでしょう。
瞑想をする前の集中とクンダリーニ・ヨーガのワーク
本書では成瀬氏が大きく分けて2種類のワークを紹介しています。
まずは瞑想の前に集中するワーク、瞑想をする前段階です。詳しくは本書を読んでいただくとして、簡単にいうと”目をつぶってまぶたの裏を見る”というものです。私も実際にやってみましたが、簡単にできて集中力が高まった感じがしました。
座禅やマインドフルネス瞑想など、瞑想をしようとしても、雑念が強すぎて瞑想ができないという人がいますがこの方法を試すことでうまく瞑想ができるでしょう。
一方でクンダリーニ・ヨーガのワークはよくわかりませんでした。クンダリーニ・ヨーガのレベル1として自分の体を細かくコントロールする方法を学ぶのが目的だそうです。
しかし、うまくできているかよくわかりませんでしたし、その後のムーラ・バンダについては一日1000回を3カ月、計10万回やるように記載があり、とてもできそうにありません。
クンダリーニ・ヨーガについては実際に指導を受ける必要があると思います。
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