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軍事評論家としての苫米地英人『真説国防論』

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真説・国防論

苫米地さんには複数の顔があります、脱洗脳の専門家、機能脳科学者、エンジニア、ギタリスト・・・など。最近目立っているのが軍事評論家としての側面です。

橋本徹氏の番組に出演した際は、最初に脱洗脳の専門家として紹介されましたが、橋本氏に安全保障の議論を仕掛けることによって、その後は軍事評論家として出演しています。私も以前記事にしました。

橋下徹VS苫米地英人!?『橋下×羽鳥の番組』
2017年1月30日放送『橋下×羽鳥の番組』に苫米地さんが出演しました。番組の内容と感想を書いています。

苫米地さんはカーネギーメロン大学の出身ですが、カーネギーメロン大学と米軍は密接な関係にありますし、自衛隊関係者とも繋がりがあると言います。

軍事関係の発言や本は何冊かありますが、本書『真説・国防論』は軍事評論家としての苫米地英人の集大成だと思います。

本書の特徴

戦争は独裁者が起こすのではありません。正確な情報から目を背け、都合のよい風説だけを盲信する国民感情によって引き起こされるのです。 15

軍事の話題となると、多くの人は極端な論調になることが多いと思います。日本や自衛隊を賛美するvs憲法九条を守るです。

日本や自衛隊賛美は論外ですが、九条を守っていれば平和が保てるというのも現実離れした空論でしょう。

苫米地さんの立場としては、日本の国防にはいくつかの問題点があり、それらを解決することによって国防を実現するというものです。

例えば自衛隊、特に陸上自衛隊の装備の問題です。いまだに冷戦時代の思想に捕らわれています。具体的には北海道に駐留する北部方面泰第1特化団が現在でも対ソ連を想定した装備と訓練をしていること。現在の国防事情に合っていないというのです。

自衛隊の問題点や改善点を上げたうえで、現実的にどう国防に向き合っていくかの案を書いているのが特徴です。

問題点がないわけではありませんが、それなりにバランスの取れていて、現実的だと私は思います。

3種類の国防案

苫米地さんは本書で国防のあり方を提示します。具体的には限られた国防予算をどのように使うかです。国防の予算を増大させては、その他の経済に悪影響が出ますし、増やすときりがないので、どう配分するかを考えるのは現実的だと思います。

まず一つ目が、現在の防衛費約5兆円にあたるGDP1%程度を、すべて海外のロビイングに費やすという方法です。 77

具体的には中国、北朝鮮、ロシア、アメリカなどに対してODAや経済援助、その国の国債の購入など。国防は軍事力だけでなく、経済によっても可能だというのです。とはいえ、軍事力を0にしてしまうのは現実的ではないですし、国民に受け入れられるとも思えません。

二つ目は、専守防衛ではなく「専攻防衛」という考え方です。77

サイバー攻撃やミサイルなど、現在の戦争では先に攻撃した側が圧倒的に有利です。現在の自衛隊のように攻撃を受けてから反撃をしていたのでは、とうてい間に合わないでしょう。そこで抑止力になりうる攻撃手段に予算を集中されせるというもの。潜水艦、特殊部隊、サイバー部隊の3つをあげています。

最後の三つ目は、前述の二つの中間です。経済的な防衛戦略と同時に、防衛費は実行録のある攻撃手段に絞り込んで投入する。 78

これが現実的でしょう。経済と実行力の両方から国防能力を高める。明言はせず国民が判断するべきだといいますが、苫米地さん自身もこの案を推しているように思われます。

できるだけ人を殺さないで相手の戦力を奪うことが重要

戦争とは効率よく相手を殺すことを追求しているように思われますが、少なくとも先進国の軍隊はそうではないと苫米地さんはいいます。

まず自軍にあまり損害を出すことができません。自軍に死者が出れば、民主主義の国家であれば戦争停止を唱える政治家が選挙で勝利する可能性が高まります。民間軍事会社(PMC)が使われるのも、死んだとしても軍人ではないので、自国の世論に影響が少ないのが一つの理由だといいます。

また、相手を殲滅してはその後の占領にも影響が出ますし、国際法を無視した攻撃をすれば国際的な非難は免れません。

21世紀の世界では、先進国の正規軍には人道的な兵器や戦術が必要なのです。

よく言われる核武装が現実的でないのはこの点です。核武装をするだけでも、国際的な非難を受けます。使用すれば非難はもちろん、その後の復興で負の影響は免れません。

現実的で具体的な解決策か?

苫米地さんの主張をまとめると、経済的な国防を行いつつ、潜水艦、特殊部隊、サイバー部隊に予算を集中させるというもの。

潜水艦に関しては、日本は戦前から戦後まで力を入れており技術を持っています。原子力ではない電池式の潜水艦の能力を向上させていくのは問題ないと思います。

サイバー部隊については、苫米地さんは繰り返し必要性を訴えています。これも異論は少ないでしょう。

特殊部隊については、問題があると私は思います。苫米地さんの案は現在の自衛官22万人を10万人に削減して、特殊部隊を1万人にするというものです。

自衛隊の予算については、人件費が大きいのは事実です。現在の自衛隊の装備と戦術が、時代に合っていないのはわかりました。それらの変更は必要です。しかし自衛隊には災害救助などの仕事もあります。22万人→10万人と大幅に減らして大丈夫でしょうか。

また、特殊部隊を1万人というのも現実的か疑問です。苫米地さんはシールズチームシックスやデルタフォースなど特殊部隊の兵士と一般の兵士の違いを書いています。

さきほど、現代の白兵戦では、貫通弾によって脚を狙い、行動不能に陥らせるのがスマートな戦闘だと述べました。

しかし、無差別攻撃や自爆テロを厭わないテロリストに対しては、そんな悠長なことは言っていられません。極端な話、小型核爆弾のスイッチを持って自爆テロを仕掛けてくる可能性もあり、特殊部隊の任務はそのスイッチを押す前に指一本動かせないほどに破壊するのです。

そのためには脚ではなく、神経を狙う。頭上から脊髄を打ち抜く。毎秒100発の弾丸を放つ自動小銃で脳や脊髄だけを狙い、神経を切断して絶命に至らしめるのです。

こんなことは一般兵では到底可能なことではなく、100万人の中から選りすぐられた1000人ほどのエリートだからこそなせる技です。彼らは15メートルほどの距離までなら、目標を目しして狙いを定めなくとも弾丸を命中させることができます。 162~163

特殊部隊の兵士には、とてつもない能力が要求されます。そして100万人から選抜されるといいます。確かに、アメリカ軍であれば150万人いるのでその中から選抜できます。しかし自衛隊は現在でも22万人で、それを10万人にしてしまったら、選抜する分母が減ってしまいます。10万人から1万人を選抜したら、特殊部隊の兵士の平均的な能力は落ちてしまうのではないでしょうか。

例えば徴兵制を導入するならば、全国民から適性のある人を選抜できますが、国民感情的に無理だと思います。人件費も結果的に増えてしまうので、とても賛同できません。

よって特殊部隊の話については、まだ検討の余地がありますが、その他は現実的で独自性のある提案だと思います。少なくとも国防を語る上で一読の価値はあるでしょう。

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