もっとも難しい苫米地本
現在200冊以上出版している苫米地さん。
その中には内容を簡単に理解できる本もあれば、難しく内容を理解しにくい本もあります。私の考えでは『立ち読みしなさい!~美しいほどシンプルな成功術(ありがとう出版発行)』や『ビジネスが変わるコグニティブ・サイエンス (まんが苫米地式02)』など漫画で書かれている苫米地さんの本は理解しやすく、初期の『洗脳原論』、『苫米地英人コレクション1 洗脳護身術』は内容が高度で難しいです。
『認知科学への招待』も大学の教科書レベルで書かれていてレベルが高いですし、コーチング関連の本は用語がわからないと理解できない可能性があります。
しかし私がもっとも難解だと感じたのが本書『近未来のブッダ (21世紀を導くリーダーの鉄則)』です。ブッダとタイトルにあるので、仏教関連?リーダーの鉄則?と疑問に思いながら本書を手に取りました。
内容としては大変抽象的で、難しいと思います。
正直いって私自身正しく本書を理解できているか怪しい、今回は私の主観が強いレビューになります。
本書は『慈悲』がテーマになっています。
『慈悲』を持ったブッダのようなリーダーが21世紀には必要で、そのリーダーになる方法が書かれている…というのが私の解釈です。苫米地さんが語るリーダー論は大変ユニークでよくあるリーダー論とは一線を画します。
慈悲とは?
慈悲とは何か?がテーマで本一冊分の内容です。逆にいうと、一言で言えるほど単純な概念ではないでしょう。
慈悲は放っていおいて現れるものではありません。本能的に現れるものではなく、瞑想で代表されるような修行をしないと、慈悲にはたどり着きません。 20
慈悲の心を持った人は自然な状態ではなく、修行をして意識的にならないと持てないのです。
本書では以下の瞑想法が乗っています。止観瞑想や映画をみる瞑想法ではなく、他の苫米地さんの本には乗っていない本書オリジナルの方法だと思います。
- 慈悲の瞑想
- 縁起の瞑想
- 八正道の瞑想
- 悟りの瞑想
慈悲がどういうものか知るだけではなく、慈悲を実践することも必要だと苫米地さんいいます。
慈悲を実践できたかを確認するためのチェックシートも乗っています。
例えば今日自分が行った慈悲の行動や他人の慈悲の行動などを記録します。
これは簡単にできるものではないでしょう。
トロッコ問題には正解がある!?
哲学者のフィリッパ・フットが提起したトロッコ問題というものがあります。
トロッコ(路面電車)が暴走して、このままだと線路の先にいる5人が犠牲になる。線路を切り替えると犠牲者は1人で済むが、切り替えるべきか?という問題です。
NHKで放送されたハーバード大学のマイケル・サンデル教授の授業、『ハーバード白熱教室』で日本でも数年前に話題になりました。
最近でも山口県岩国市の小学校の授業で扱われ、問題となったと報道されました。

この問題の主題は、多数を助けるために少数を犠牲にしてもいいのか?ですが、様々な意見があると思います。トロッコ問題は議論を呼ぶために設計された思考実験なのですから。
しかし苫米地さんは本書でトロッコ問題の正解について書いています。
この問題は、人を戦争に駆り立てる危険な思考を孕んでいます。戦争は「生き残るのが多いほうを救え」という論理でも遂行されるのです。
この質問に優秀なハーバードの学生は悩んで悩んで、時間内には答えが出ません。実はそれが模範解答です。悩んで悩んで、とうとう時間内に答えが出ずに、後人を殺してしまう。それが正解なのです。世界の特殊部隊の入学試験や自衛隊も、まったく同じではありませんが、トロッコ問題と同様の問題でテストをします。それが映画やドラマならヒーローが出てきて一撃で一人を倒して、あとの全員を救ってハッピエンドでしょう。でも、それはフィクションの世界のことです。実際の世界の特殊部隊は、そこで「五人を救うから一人を死ぬほうを選びます」と即答する人は採用されません。
現代の特殊部隊の運用は、すごく仏教的だともいえます。悩まないといけません。最後の最後まで悩んでなにか両方救う方法がないかと悩み続ける。その結果、間に合わなくて五人死なせてしまうことが行為としては正解なのです。この考え方が慈悲のあり方に通じます。 63-64
世界の特殊部隊や自衛隊でトロッコ問題に類似した問題が出されているのにも驚きましたが、答えを出さないことが模範解答だというもの意外です。
私が思い出したのは、マンガ『HUNTER×HUNTER』のハンター試験でした。
主人公たちは老婆から『息子と娘が誘拐された、一人しか取り戻せない、①娘②息子どちらを取り戻す?』というクイズを出されます。
HUNTER×HUNTER 1巻
このクイズはどちらかを選ばず”沈黙”が正しい答えでした。トロッコ問題と同じです。
昔これを読んで感心した覚えがありますが、苫米地さんがトロッコ問題に正解があるというのも、納得できました。
21万6千円の坐布の意味は?
本書の最後には、苫米地さんが監修した坐布(瞑想で使う座布団)の広告がのっています。
サイトは以下です。
パリコレのデザイナーと苫米地さんが作った蓮華座布ですが、企画意図がまったくわかりませんでした。
苫米地さんのセミナーもついているとはいえ、216,000円と高額。
本書で散々慈悲について語って、最後にこの広告を読むわけです。読者としてはどう解釈したらよいのでしょうか?
本書以外にも苫米地さんの本には瞑想方法が書かれていますが、どの瞑想法も禅宗の座禅と違って坐布は必要ないはず。
単純にビジネスだと言うのであれば、このとてつもなく抽象度が高い本の最後に載せる必要性がわかりません。
読者を試すためにあえて内容と反する広告を載せているというのも考えすぎでしょうか。
この広告も私が本書を一番難しいと思った理由の一つです。
あなたはどのように考えますか?
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