ディベートで超論理思考を手に入れる 超人脳の作り方の内容
苫米地さんは、上智大学の学生時代、競技ディベートで活躍したそうです。その経験や知識を元にディベートを解説するのが本書の内容です。
もっと単純にいうと、どうやって考えてどのように意思決定をすればいいのか?について書かれた本といえます。
ディベートの方法論を使えば、苫米地さんのように考えることができ、多方面で成果を出すことができるそうです。
「どうすればドクターのようにものを考え、多方面で成果を出すことができるようになるのですか?」
本書はこの質問に対する私の回答のひとつです。
言うまでもなく、私のこれまでの著作はすべて、読者をゲキテイにパワーアップさせるための内容を盛り込んでいます。しかし、特に「ドクター苫米地のように思考できるようになること」に目的を絞るなら、本書そこが決定版のテキストになるでしょう。 No.6
また、付録として苫米地さんのディベートの弟子である田村洋一氏のディベート入門講座も収録されています。
超人脳とは?
本書のタイトルには、”超人脳”とあります。超人の定義は『各方面の分野でずば抜けた実勢を出せること』だといいます。
そのためには論理を極めて、最終的には論理を超えた『超論理』の領域まで達することが必要で、手段としてディベートの技術が最適だというのです
感情(パトス)と論理(ロゴス)のように、感情と論理はアリストテレス哲学の時代から並んで認識されています。
しかし、普通の人間は感情が圧倒的に優位であることを提唱したのがノーベル経済学賞を受賞した心理学者ダニエル・カーネマンで、行動経済学の創始者の1人です。
カーネマンは著書”ファスト&スロー”の中で、人間には意思決定をする思考システムが2つ存在し、直感的で速いシステム(システム1)と論理的で遅いシステム(システム2)が存在すると書いています。
何かを決めようと思ったとき真っ先に出てくるのがシステム1です。システム2は遅い上に、多くのエネルギーを消費するので使うのが大変だからです。
このシステム1を無意識や感情と言い換えると、私やあなたの意思決定のほとんどを無意識や感情で行っていると言えます。
苫米地さんは、感情をコントロールするのは人間として最低限必要だといいます。いいかえれば感情をコントロールできるのが普通の人間。
それにプラスして論理を極めることができれば、普通の人間を超えた人間=超人になれるというのが、超人脳の意味です。
超人になれば、普通の人と違う意思決定ができるので、『各方面の分野でずば抜けた実勢を出せる』可能性が高まります。
トゥールミンロジック(トゥールミンモデル)
本書の中心となる技術がトゥールミンロジックです。
トゥールミンロジックとは、論理を構成するためのモデルです。トゥールミンモデルという呼び方が一般的ですが、同じものです。
苫米地さんに習って、本記事ではトゥールミンロジックで統一します。
イギリス出身の分析哲学者であるスティーブン・トゥールミンが考案しました。
論理的と聞くと、論理学を思い浮かべる人は多いでしょう。しかしトゥールミンロジックは論理学とは違います。例えば三段論法などとは一線を画します。
私がこの本を書いたときは、私の狙いは哲学的なところに充てられていた。すなわり、アングロ・アメリカ系の哲学者が想定する過程を批判するためのものであり、その批判対象とは意味のある議論はなんであっても形式的な用語に置き換えられるということについてであった。 議論の技法 Ⅸページ
トゥールミン自身が言っているように、アリストテレス以降の論理学を批判するために考案されました。しかしコミュニケーション学の分野で注目され、競技ディベートで使われるようになったそうです。
トゥールミンロジックは以下のような構造になっています。
No.1000
この中で基本のデータ、ワラント、クレームの3つだけマスターすれば論理力は飛躍的にアップします。
データ(証拠)
論理の基礎となる証拠です。統計データや科学的データなど、客観的にみて事実と呼べなくてはなりません。
例えば殺人事件の犯人がAあると主張する場合は、Aの指紋や目撃証言などがデータになります。
ワラント(根拠)
英語ではwarrantですが、データとクレームを繋ぐものです。
あまり馴染みがないと思います。日本では省略しても伝わる場合があるからです。殺人事件に例えてみます。
データ → 凶器であるナイフに容疑者Aの指紋が残っている。
ワラント → 指紋があるということは、Aが凶器のナイフを使った。
クレーム → Aが犯人だ。
このように単純な例であれば、凶器のナイフにAの指紋があった→Aが犯人であるというようにワラントを省略しても伝わります。しかし、複雑な論理を組み立てるときや、主張を聞いてもらう人がその事柄に詳しくない場合はワラントが重要になってきます。
クレーム(主張、意見)
クレームと聞くとクレーマーを連想しますが、主張や意見のことです。
普通は何かしらの主張があって、トゥールミンロジックを使います。殺人事件の例ではAが犯人だ!というのがクレームです。
トゥールミンロジックの使い方
トゥールミンロジックはツールです。知識として知っているだけではなくて、実際に使うことが重要です。
具体的には2つの使い方があります。
自分がクレーム(意見)を言う場合
自分で何か意見をいう場合に使えます。
データやワラントを固めた上で、クレームを言えば説得力が増します。また議論になったとしても強いです。
他人のクレーム(意見)が妥当かどうか判断する場合
他の人が何か意見を言ったとき、それが妥当なのか判断することができます。
相手のクレームは一旦保留にして、他の2つを検討しましょう。データはあるのか?ワラントは?という感じです。
それは多くの人がクレームしかないからです。データやワラントがないクレームは単なる思いつきなので、容易に崩すことができます。
逆に、データやワラントがしっかりしているクレームであれば、自分の意見と違ったとしても尊重するべきです。感情的に気に食わないことと、論理的であることは両立します。
まとめ
苫米地さんの本の中でも、本書は大変オススメです。
胡散臭さも少ないです。それでも胡散臭いというのであれば、苫米地さん以外の方が書いたトゥールミンロジックの本を読むといいでしょう。
トゥールミンロジックは大変強力な武器になります。
基本のデータ、ワラント、クレームはシンプルで使い勝手がよいです。ツールである以上、誰でも…もちろんあなたにも使えます。例えば苫米地さんが相手だとしても、有効です。
私自身もよく使っています。以下の記事はトゥールミンロジックを使用して、苫米地さんの意見を検証しています。

以下の記事ではSF作家の山本弘氏の洗脳護身術に対する批判を検証しています。

自分の意見を言ったり、相手が誰であろうとも意見を検証できる…これは大変画期的です。
ディベートで使うだけではもったいない。義務教育で教えるレベルだと思います。また、ビジネスや政治など他の分野で非常に役に立ちます。
私の願望ですが、トゥールミンロジックを多くの人マスターして、論理的な人が増えれば社会全体が良い方向に向かうと思います。
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