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楽観主義者VS悲観主義者!?『オプティミストはなぜ成功するのか』

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オプティミストはなぜ成功するか

『エフィカシーを上げろ!!』苫米地さんはこれを繰り返し言っています。苫米地さんの本は同じ事が書かれているという批判もありますが、この主張が一貫しているのは事実だと思います。

また、コーチングでもコーチの役割はエフィカシーを上げることだといいます。

しかし、なぜエフィカシーを上げる必要があるかという学術的な説明はあまりされていないと思います。本書はエフィカシーについての本ではありませんが、そのヒントになりそうな内容です。

マーティン・セリグマンとは

著者のマーティン・セリグマン(Martin E. P. Seligman)は元アメリカ心理学会会長で、ペンシルベニア大学の心理学者です。

心理学にはさまざまな分野がありますが、セリグマンは『ポジティブ心理学』という分野を提唱したことで有名です。

TEDでポジティブ心理学についての講演もしています。

また人間や動物が長期的にストレスがかかる環境ではそこから逃げるための努力を行わなくなるという『学習的無力感』の提唱者でもあります。心理学では世界的権威といえるでしょう。

コーチングとセリグマンの関係ですが、ルー・タイスのコーチング団体であるTPIEジャパンのページを見ると、エフィカシーの提唱者であるバンデューラと共にセリグマンは開発協力者として名前が上がっています(ルーと苫米地さんがTPIE開発者です)

さらにTPIEの親団体であるTPIのサイトのHistory of The Pacific Institute®(TPIの歴史)のページには以下のようにあります。

March 1994

The Pacific Institute establishes an ongoing relationship with Dr. Martin Seligman, of the University of Pennsylvania. The Institute opens offices in China, Japan and Mexico.

http://thepacificinstitute.com/about-us/より引用

(日本語訳)

1994年3月

パシフィック・インスティテュートは、ペンシルベニア大学のマーティンセグリマン博士との継続的な関係を築いています。TPIのオフィスは中国、日本とメキシコに開設しています。

本書を読むとエフィカシーのように直接的な用語としては入っていませんが、コーチング理論のもっと根本な思想はポジティブ心理学から取り入れていることがわかります。

コーチングはルー・タイスによって作られましたが、その理論的、学術的な部分の裏付けにはセリグマンのポジティブ心理学(とバンデューラのセルフエフィカシー)が完成したといっても過言ではないでしょう。

ポジティブ心理学の登場

セリグマンはポジティブ心理学という、心理学の新たな分野を切り開いた人物です。本書の最初のほうでは、ポジティブ心理学ができた経緯について書いています。

若き日のセリグマンはフロイト派(精神分析)や、当時心理学界で主流だった行動主義派(B・Fスキナー)の学者たちと実験や議論を通じて激しい戦いを繰り広げます。

これらを通じてセリグマンは学習的無力感を発見しました。このあたりの描写は小説のようでとてもスリリングです。

学習的無力感の研究の中で、無力状態になりやすい人とそうでない人がいることがわかりました。

楽観主義者VS悲観主義者

楽観主義者と悲観主義者の違い

生きていれば誰でも避けることのできないショックなこと。挫折、仕事での失敗、病気や怪我、失恋、愛する人の死など。程度の差はあれど、あなたも経験があると思います。

これらの不幸な出来事があったときに、立ち直れる人と立ち直れない人の違いは、”説明スタイルの違い”だといいます。説明スタイル・・・つまりその出来事に対する解釈が楽観的か悲観的かという問題です。

具体的には永続性 or 一時性、普遍的 or 特定、個人度(外交的 or 内向的)です。

永続性 or 一時性

不幸の原因がずっと続くものなのか、一時的なものか。

不幸な事が起こったときに、楽観主義者は一時的なことだと解釈し、悲観主義者は永遠にその状態が続くと解釈します。

例えば仕事で失敗したとして「今日はたまたま調子が悪い」or「私は失敗ばかりしている(これからも失敗し続ける)」かです。

これとは逆に、良い出来事の場合、楽観主義者は永遠にその状態が続くと解釈し、悲観主義者は一時的なことだと解釈するのです。

普遍的 or 特定

特定の理由でそうなったのか、全般的な理由か。

楽観主義者は不幸なことは特定の理由で、良いことは普遍的な理由に解釈します。悲観主義者はこの逆です。

あなたが恋人と別れてショックを受けたとしましょう。楽観主義者は恋愛以外の分野、例えば仕事や趣味などに目を向けることができますが、悲観主義者は恋愛以外でも駄目だと思い込んでしまいます。。

個人度(外交的 or 内向的)

自分のせいなのか、他人(環境)のせいか。

不幸なことが起こったとき、楽観主義者は他人や環境のせいにしがちです。悲観主義者は自分のせいにし自分を責めます。良いことが起こるとこの逆です。

これはわかりやすいので、具体例はいらないでしょう。

悲観主義者+反芻=うつ病になりやすい

悲観主義者でうつ病にはなりにくい人の特徴も挙げられています。それは反芻をしないことです。

反芻とは繰り返しのことで、本書では悲観主義的な解釈を頭の中で繰り返すことを差しています。悲観主義的な考えも一度で終われば大したことはなくても、何度も繰り返しているとうつ病になりやすいのです。

楽観主義者は反芻をしようとしまいとうつ病にはかかりにくいそうです。

楽観主義者の利点と問題点

楽観主義者のがうつ病になりにくいのは理解しやすいと思います。

しかし、それ以外の病気(ガンや感染症など)にもかかりにくいという研究結果があります。

これは病は気から・・・という精神論ではなく、楽観主義者のほうが健康なときは自分で物事をコントロールできると考えているので健康に気をつかうし、具合が悪くなれば助けを求めることが多いので、医療機関など周りのサポートを受けやすいからです。

さらに楽観主義者のほうが特定の分野では成功しやすいというのです。

具体的にはセールス、仲介業、広報、役者など人前に出る仕事、クリエイティブな仕事、政治家、スポーツ選手、競争の激しい仕事、燃え尽きる率の高い仕事など。

本書では保険会社の営業の事例が出てきますが、セリグマンは保険の営業は仕事は楽観主義者のほうが成功する可能性が高いと言います。

なぜならば保険の営業というのは断られることのほうが多いから。あなたも保険の勧誘を受けてうんざりした経験があるかもしれません。

保険の営業として成功するために必要なスキルは、セールストークなどコミュニケーション能力よりも、断られたときに楽観的な解釈(例えば今回のお客さんはダメでも次のお客さんは保険に入ってくれる)ができるかどうかのほうが重要だとセリグマンはいうのです。

本書でも離職率の高さを保険会社が気にしている話が出てきますが、多くの人は断られ続けることに耐えられず、保険の営業をやめてしまいます。心が折れなければ保険の営業の仕事を長く続けられるので、最終的には成果を出せる可能性が高いという理屈です。

しかし、楽観主義者が万能ではないことも書いています。設計や安全工学、会計士、法律家(訴訟以外)、品質管理、人事などの仕事は悲観主義者のほうが向いているというのです。

うつ病など極端な悲観主義は問題ですが、そうでなければ悲観主義者も社会や組織の中に必要です。

また、楽観主義者の解釈のしかたの中には、あきらかに問題がある場合もあります。個人度の部分です。よいことだけ自分の手柄にして悪いことは他人の責任にしてたら問題だと思います。

例えば成功した仕事は自分の手柄にして、失敗した仕事は部下に押しつける場合です。あなたもそんな上司の下では働きたくないでしょう。

これに対してセリグマンは以下のように書いています。

責任逃れを助長するようなやり方を提唱するのは私の本意ではない。なんでもかんでも内向的から外交的思考に変更することはないと思う。しかし、確実にこれをやるべき状況もある。それは、うつ病のときだ。次の章で述べるように、うつ病の人は必要以上に自分で責任を背負い込むことが多いのだ。

さらにもっと深い問題もある。そもそも人はなぜ自分の失敗の責任を取るべきなのか、ということだ。その答えは、自分の悪い点は改めるべきだからだ。もし責任を問われなければ誰も変わろうとしないだろう。人が変わるためには、内向性はさほど重要ではない。大事なのは永続性だ。もし失敗の原因が永続的なものーーー愚かさ、才能のなさ、醜さーーーだと思っていれば、変えるための行動を起こす気にはならない。しかし、原因が一時的なものーーー意欲のなさ、努力不足、太りすぎーーーだと信じれば、変える努力ができる。 95~96ページ

うつ病の人に自己責任をいうのは病状を悪化させるだけです。責任から逃れてもいいので、まずは治療が最優先だと思います。

また、自分には能力が無く、自分自身を変えることができないと思っていれば学習的無力感のようになってしまいます。自分を良い方向に変えていくには、楽観主義の視点が必要だというのです。

悲観主義者が楽観主義者になるには?

本書には自分の楽観度を測ることができるテストがのっています。大人用と子ども用の2種類です。また自分のうつ病度のテストもあります。

重度のうつ状態で自殺を考えている場合は、すぐに専門家の診断を受けることが奨励されています。

では自分がうつ状態ではないものの、どちらかというと悲観主義者で、できれば楽観主義者になりたいと思っている場合はどうすればよいのでしょうか。

本書では認知行動療法を応用した方法が載っています。認知行動療法は自分の主観に対して、客観的に見られるようにしていく方法です。以下の記事が詳しいです。

http://cbt.ncnp.go.jp/guidance/about

まずは自分の悲観主義的な解釈に気づくこと。そしてその解釈に対して反論していく技術です。以下は勧誘の電話をかけて断られた場合の例です。

困った状況:長い間こっちにしゃべらせたあげく、相手が電話を切ってしまった。

思い込み:あそこまで言わせたのだから、最後まで聞いてくれればいいのに。詰めのところで台無しにしてしまうなんで、自分はどこかいけないところがあるに違いない。

結果:私は腹を立てて、自分に失望した。もう今夜はあきらめてしまいたくなった。

反論:相手は何かしている最中で、早く切り上げたかったのかもしれない。忙しい人をあれだけ長く引きつけておけたのだから、私はなかなかのものだ。相手が何をしているかまでコントロールできないからね。私はできるだけ上手に説得して、向こうが聞いてくれる気持ちと時間があるのを願うだけだ。聞かない人は損をするだけさ。

元気づけ:電話を続ける元気が出た。長い目で見ればきっと報われると自信を持った。                            353ページ

まずは困った状況~結果までを紙に書いたり、声に出したりします。それに対して反論をして、最後は元気づけをします。

特に自分の思い込みに対して反論する技術は詳しく書かれていて、興味深かったです。またどうしても反論できない場合や時間がない場合は悲観主義的解釈から気をそらすこともすすめています。

コーチングへの活用

本書でいう楽観主義的解釈は、そのままエフィカシーが高いことに置き換えることができます。

セリグマンはリスクの高い職業の場合は、楽観主義者のほうが有利だといっていますが、これは大きなことを成し遂げるにはエフィカシーを高めることが必要だという苫米地さんやバンデューラの言葉と一致します。

楽観主義的解釈はアファメーションやセルフトークを作る上でおおいに参考になるでしょう。

エフィカシーを下げるような悲観主義的な考えが頭に浮かんでときは本書の技術を使って反論することもできます。

重要なのは、出来事に対する自分の解釈しだいで病気にかかりにくくなったり、仕事の成果を上げる上で有利になったりすること。これを本書ではオカルトや精神論として扱うのではなく、まっとうな心理学として研究している点です。

本書を読むことによって、苫米地さんが繰り返し『エフィカシーを上げろ!!』と主張している背景を理解することができます。

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