インチキ霊能力者の手口を暴露する!?『サイキックマフィア』

サイキック・マフィア―われわれ霊能者はいかにしてイカサマを行ない、大金を稼ぎ、客をレイプしていたか (Skeptic library (05))

1980~90年代には地上波で心霊番組やオカルトを扱った番組などが放送されておりました。夏になると特番も組まれていて、私も当時よく見ていた記憶があります。

このような番組には霊能力者が出演している場合もありました。

最近ではコンプライアンスの関係でしょうか、地上波ではあまり見かけません。

以下の記事にかかれているように、2000年代には江原啓之氏のスピリチュアル番組や細木数子氏の占い番組に取って代わられました。

霊能者・宜保愛子さん没後16年 「心霊番組」はテレビからなぜ消えたのか? 〈dot.〉
■ビートたけしやカール・ルイスの霊視で話題に かつて日本中にブームを巻き起こした霊能者・宜保愛子さん(享年71)を覚えているだろうか。今から16年前の2003年5月6日にこの世を去った彼女を偲ぶ人は今...

心霊やオカルトブームの流れに便乗して登場したのが霊感商法です。霊感商法とは除霊や霊との交信などを行い、高額な金銭を要求する悪徳商法の一種です。

現代では時代遅れのやり方かもしれませんが、法律相談を投稿する弁護士ドットコムというサイトで霊感商法を検索してみると、60件ほど相談が出てくるので、今でも霊感商法はそれなりの数が存在するようです。

われわれ霊能者はいかにしてイカサマを行ない、大金を稼ぎ、客をレイプしていたか』というとんでもないタイトルがついている本書ですが、アメリカの霊能力者がどのように霊感商法を行っていたか…どのようにして霊が存在すると信じさせることができたかがメインの内容です。

それを元一流霊能力者である著者が語っています。いわば暴露本といえます。

他にも霊感商法の歴史、著者が霊感商法業界に入った経緯、著者とフリーメイソンの関係など。特にフリーメイソンとの関係については興味がある人も多いでしょうか。

本書は苫米地さんがニコニコ生放送で紹介してから気になっていました。すでに絶版になっており、Amazonの中古品ではかなりの値がついています。今回入手できたので、レビューします。

霊能力者への道

著者は元々はキリスト教徒で、勉強をしながら食品雑貨店やレストランなどで働いていました。

しかし心霊主義はまっている幼なじみと再会したのが自身が霊能力者になるきっかけです。

わたしは子供時代の友だちの一人にばったり出会った。名前はラウールということにしておこう。ラウールは福音伝道者になるため、サウス・カロライナにあるベンテコスト派の聖書学校に行っているはずだった。しかし、ラウールの話では、彼は祭壇への道をあきらめて、いまは心霊主義にどっぷりとはまっているという 24

二人と元々キリスト教徒で、特に友人は複音伝道者、つまり布教活動の専門家を目指していたわけです。キリスト教の知識が霊能力を信じる土台にあったようです。

この後に出てきますが、教会、礼拝、司祭などキリスト教で使われているシステムや用語を霊能力者がそのまま使っているのも理由のひとつでしょう。

わたしたち二人は、タンパで最大の心霊主義教会の公開礼拝に参加した。その教会では、ミルドレッドとマーティンのバクスター夫妻が共同司祭と常駐の霊媒を務めていた。

いまふりかえると、この見えない力との最初の出会いはじつに印象的なものだった。訓練された声を持つ、長身で威圧的なミルドレッド・バクスターが(彼女はオペラ歌手になる勉強をしたが、結局ものにならなかった)壇上に立って、会衆の一人一人に「あの世からのメッセージ」を伝えるのである。そのメッセージの正確さは、しばしば受け手が思わず驚きと感嘆の声を漏らすほど正確だった。じきにラウールとわたしの番がきたが、二人のメッセージも、驚くほどの内容ではなかったとはいえ、感銘を受けるくらいには正確だった。

わたしたちは、恒例の日曜日の礼拝のほかに、バクスター夫妻が不定期にひらいている交霊会にも列挙した。交霊会では、いわゆる「物理的な」心霊現象を片っ端から見ることができた。ほとんどいつも闇のなかで、霊の顔が絹の布の上に「凝集」する。それまで白紙だったカードの上に、霊の言葉が現れる。透明でゆらゆらと揺れる霊の姿が、霊媒の身体から出る謎の心霊物質エクトプラズムから「物質化」する。死者の声が、ひとりでに室内を飛びまわるブリキのトランペットから話しかける。

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ここでは実際に霊能力者がどのようにして霊能力が本物であるかを信じさせるかの一例が書かれています。大きく分けて以下の2つに分類されます。

1、死者の声など、霊能力者本人には知りえない情報を伝える

故人や生前親しかった人しか知りえない情報を霊能力者が話すわけです。これは霊能力者を信じてしまうのも無理はないと思います。

公開礼拝といっているので、この儀式によって信者を獲得することが目的だったのでしょう。またこの後の交霊会で使う個人情報を収集することもあるようです。

2、霊の顔や霊の言葉、エクトプラズムや飛ぶトランペットなど物理では説明できない現象を起こす

上記の公開礼拝で興味を持った人を、さらに熱心な信者にするために行われているのが交霊会です。超常現象を目の当たりにして、ますます霊能力を信じることになります。

霊能力者の分類ーー「眠っているタイプ」「目覚めているタイプ」

著者と友人のラウールは、霊能力がイカサマだと気づきつつも、バクスター夫妻に師事します。イカサマだとわかって師事するというのは自分もそのイカサマで霊能力になりたいからです。

そして霊能力者には「眠っているタイプ」と「目覚めているタイプ」に分類されると著者はいいます。

「眠っているタイプ」は、素直に霊を信じている人間たちで、感じのいい子柄な老婦人であることが多い(ただし、心霊主義に関わる老婦人がみんな感じがいいわけではない)。このタイプは自分が霊能者で、「霊界からの波動」を感じ取れると本気で思っている。このタイプは、悪意のかけらもない物腰が業界のイメージアップになるので、業界周辺をうろつくことを許されている。しかし、「眠っているタイプ」がイカサマ商売の仲間にくわえてもらうことはない。

それに対して、「目覚めているタイプ」の霊媒は、自分たちをイカサマ師であることを知っていて、それを認めている者たちだーーすくなくとも、同業者の秘密サークルの中では。

(中略)

最初はわたしたちも、自分たちが心霊的なメッセージを受け取ることができると本気で思っていた。

そこで自分たちは、心霊主義の崇高な真理ーー黄金率、霊的な印による救済、永遠の進化ーーを教え、霊視によるメッセージを専門とする霊媒として開業することに決めた。物理的な現象をでっちあげるところまで身を落とすつもりはなかった。もしトランペットやエクトプラズムをお揉める客がいたら、堂々としかし素直に、どこかほかへお行きなさいと告げた。

わたしたちはすぐに、「眠っているタイプ」の霊媒は、たとえ半目を開けていようとも、顧客を魅了する物理的な霊媒にはほとんど太刀打ちできないことに気づいた。人々は、霊の姿や直接談話現象、心霊写真といった奇跡を求めているのだーーそして、正しいのはつねにお客様のほうではないか?

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大きな違いは霊能力者本人が霊能力者を信じているかどうかです。イカサマの有無ではありません。

「眠っているタイプ」の霊能力者でもイカサマを使うことがあります。本物の霊能力は存在するが、その補助や方便としてイカサマを行う場合です。

著者たちは「眠っているタイプ」を目指していますが、最終的には「目覚めているタイプ」の霊能者になっています。

これは「目覚めているタイプ」のほうが派手なパフォーマンスが使えるため需要があり、お金も儲かるからでしょう。

サイキックマフィア

著者とラウールはキャンプ・チェスターフィールドという霊能力者たちが集まる本拠地に行き、バクスター夫妻のライバルで、キャンプ・チェスターフィールドのトップ霊能力者であるヴァイオラ・オスグッド・ダンに弟子入りします。

(余談ですが1891年に設立されたキャンプ・チェスターフィールドは現存するようです)

Historic Camp Chesterfield! - Historic Camp Chesterfield
A Spiritual Center of Light. Founded in 1886, one of largest communities of Spiritualist in nation; the largest in Indiana. World-class curriculum for spiritual...

ここで霊能力者がなぜ知るはずのない情報を知る方法が明かされます。

ヴィオラはラウールとわたしに彼女の繁盛する教会で霊視能力をするように招いてくれ、事前調査のために彼女のファイルを利用させてくれた。このファイルはまさに金の鉱脈だった。ヴィオラ・オスグッド・ダンは、死者を呼び覚ますためにアメリカ全土と数カ国を旅行していて、彼女の交霊会にきた何千という列席者のファイルを作っていた。彼女は、このファイルをほかの都市にいる心霊マフィアのメンバーたちに提供していた。交霊会の列席者ーーその多くは交霊会マニアであり、彼らにとって暗室の魅力は、それがどこで開かれようとも逃れることのできない誘惑なのだーー に関するこの情報交換こそが、フロリダにいるわたしが、たとえばシカゴやロサンゼルスからきた昔からの心霊主義たちの前で、彼ら自身と彼らの亡くなった愛する人々についての情報を驚くほど正確にいいあてられる原因なのである。 34

霊能力者たちのネットワークがあり、そこで顧客情報が共有されていました。

現代であれば、顧客情報をデータベース化し共有することは簡単ですが、インターネットが存在しない時代から行われていたのです。

これがサイキック”マフィア”の理由になります。

わたしは、社会保障番号から保険証券の番号、はては秘密にしている銀行番号まで霊視したのだ!

どうやってそういう情報を得ていたのか?

簡単なことだ。わたしはスリの達人になったのである。

ほとんどの場合には、普通のスリよりも簡単だった。必要なのは、ラウールかわたしがーーそれはどちらかが交霊会をやっているかによってーー真っ暗闇のなかで、トランペットから流れる霊の声に一心不乱に耳をそばだてている最中の女性のハンドバックを盗んで、べつの部屋に持っていき、中身を片っ端から拝見することだけだった。ハンドバックはあとで同じ場所に戻され、交霊会が終わって明かりがついたときには、その女性が疑うようなことはなにもない。

この方法なら、社会保障番号などの秘密情報を得ることができるだけでなく、霊があとで「物品引寄」で返却する多くの私物を手に入れることができる。おそらく交霊会の列挙者は、ハンドバックからわたしたちが拝借した小さな宗教的シンボルの紛失に数日や数週間は気づかないだろう。そのころにはたぶん、紛失と交霊会を結びつけて考えることはできなくなり、どこかでハンドバックからほかのものを出したときに落としたのだろうと考えるはずだ。わたしたちは数週間とは数ヶ月の間を置き、それからある夜、交霊会のさなかに霊がこう宣言するのである。「あなたに一つ贈り物がある」そして、紛失した宗教的シンボルがその女性の手の中に転がり落ちるのである。 44-45

著者はスリや盗聴など明らかに違法な手段を使って、顧客の個人情報を集めていたようです。これもマフィアと呼ぶ理由の一つでしょう。

この他にも事前に質問カードに記載してもらう方法もあります。

本書では上記以外にも以下が暴露されています。

  • 封をした封筒の中の質問カードを読む
  • エクトプラズムの正体
  • オルガンやピアノなどの楽器が勝手に演奏される
  • トランペット交霊
  • 列座者の空中浮揚
  • 霊のカード書紀
  • 交霊室でのセックス

マジックのタネと一緒で、トリックを聞いてしまえば「なーんだ」という感想を持つものばかりです。

これらは単独では機能するのではなく、交霊会、教会といった舞台装置、霊能力者の演出といったものが揃って初めて真価を発揮するのではないでしょうか。

特にトリックがバレそうになったり、実際にバレた場合にうまく開き直れるかが霊能力者としての力量に差であると著者はいいます。

霊能力者として引退、フリーメイソン

キャンプ・チェスターフィールドで霊能力者として成功し、多くの信者と目のくらむような大金を手にした著者ですが、最終的には友人であったラウールと決別し、霊能力者として足を洗い、この暴露本を書いています。

著者はインチキで信者を騙して金を巻き上げることが後ろめたかったようです。しかし足を洗う直接的な理由は2つあるといいます。

一つは養母となる女性が現れたこと。著者は幼いころに実の母親を亡くしたそうです。そして信者としてやってきた女性と不思議な縁で養子縁組をします。

もう一つの理由として、フリーメイソンに加入したことを上げています。

母と彼女の持つ正直さと誠実さにわたしがだんだんと共感をおぼえていったことが、わたしが霊媒家業をやめようと決断した最大の原因である。しかし、もう一つの理由は、わたしがフリーメイソンの会員になったことだった。

わたしは、まだ霊媒をしていたころに、教会の信者の一人からの誠意あふれる勧めで、フリーメイソンの友愛の輪に加わった。わたしは心ならずも、フリーメイソンの義務を真剣に考えるようになった。この義務をなんとなく恐いとさえ思うようになったのである。信じられないと思われるかもしれない。なにしろ、私は大半の人たちが神聖と考える事柄を冒涜するのを生業としてきた男なのであるから。フリーメイソンの精神は、わたしのなかで酵母のような作用をしたのである。 185-186

この本を読んでいて、いきなりフリーメイソンの名前が出てきたので大変驚きました。

しかし、フリーメイソンについても推測できることがあります。

まずフリーメイソンに入会するには、職業についていることと、何かしらの宗教を信仰していることが条件として挙げられます。

著者がフリーメイソンに入会したのは、霊能力者として活躍している時期なので(偽っていなければ)職業=霊能力者、宗教=心霊主義ということになりますが、問題なく入会できたようです。フリーメイソンはかなり懐の深い団体といえます。

また、霊能力者を廃業する際にフリーメイソンの友人に相談して、その友人に助けてもらったそうです。

フリーメイソンは秘密結社なので陰謀論のネタにされがちですが、実際にはインチキ霊能力に罪悪感を持ってしまうほど崇高な精神で活動している団体であるといえます。

まとめ

本書に出てくるのは1970年台のアメリカでの出来事です。

現代の日本とは文化的背景や宗教的素養もだいぶ違うので、これをそのまま使って霊能力者を騙ることは難しいでしょう。

しかし、これを応用したりベースにして新しい霊能力者を騙る方法を開発できる可能性はあります。

賢者は歴史に学ぶといいますが、過去のインチキ霊能力者のトリックをを知ることで、現在や未来のインチキ霊能力者から身を護ることになると思います。

またフリーメイソンという団体の一面を垣間見ることができるので、フリーメイソンに興味がある方にもオススメです。

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